- 松橋裕子さん 1971年生まれ 茨城県在住
- 第1子/2003年8月生まれ/高校3年(女)
- 第2子/2005年3月生まれ/社会人(男)
※掲載の年齢は取材時のものです。
写真はご主人と一緒に♪
自閉症スペクトラムの疑い
第二子の息子が自閉症スペクトラムです。
歩くのは早かったんですが、
1歳半になっても走れない。
夜中2時3時まで寝なくて夜泣きもすごい。
睡眠障害だったんでしょうね。
これはちょっとおかしいな、ということで
診断を受けることにしました。
地獄のようだったダブル幼少期
よっちゃん(第二子の息子さん)は
とにかく外で遊ぶのが好きで、
一旦外に出ると絶対家に帰りたくない!
暗くなるまで遊ぶんだけど
晩ご飯も作らないといけないし。
無理やりにでも家に帰ったら、
ずーっと泣き続けるんです。
1時間くらいは泣いてたかな?
そしたら、年子のお姉ちゃんも
つられて泣き出すんだよ~。
2人でギャーギャー泣いてる間に私はご飯を作って。
毎日毎日。気が狂いそうでしたね。
買い物しようとスーパーに行けば、
また2人でギャーギャー泣き出して。
友だちに「大変だね・・・」って
声かけられたの覚えてます(笑)
それから買い物に連れて行くのはやめました。
幸いうちはパパが18時くらいには帰ってきてたから、
そこから買い物に行ったりできましたけどね。
お風呂だけは自分の時間!って
決めて入ってました。
そうでもしなきゃ頭がおかしくなりそうでした。
自分の時間が欲しい!
専業主婦してたけど、
そんな感じの毎日で何にもできないし、
自分の時間も欲しい!外に出たい!と
思って仕事をはじめることにしました。
それから2人とも保育園に通うようになりました。
保育園に行かせるのも大変でね(笑)
よっちゃんはいつも手に何かしら
握りしめてるんです。安心するから。
でも保育園に行くと「家に置いてきてください」って
言われるんですよね。
だから無理やり手から奪い取ったら
ギャーギャー泣いてね。
そりゃそうだよね~
自分のこだわりを奪われたんだからね。
毎日懲りずに格闘してましたね。
昼間は楽しそうに過ごしてたみたいですけどね。
早生まれからの成長の遅れ
よっちゃんは3月末の生まれだから、
保育園ではひとつ下のクラスで生活していました。
最初は下のクラスの子たちと
発達ペースも同じくらいだったので
良かったんだけど
その保育園は発達に応じて
クラスを分けるやり方だったので、
よっちゃんはいつまでたっても
2歳児のクラスでね。
年長さんになる5歳のときに、
さすがにこれでは成長しないんじゃないか?
と思って、たまたま空きのあった
幼稚園に転園しました。
そしたら同じクラスになった
同級生のお友だちのことを
「お兄ちゃんお姉ちゃん」って呼んでましたね(笑)
でもそのお兄ちゃんお姉ちゃんの行動を
見て過ごしたからか、
その1年は成長が早かったですね~。
もう1年早く転園しておけばどうなってたかな?
と思うときもあります。
やれることは何でも!
自閉症と分かってからは
色んなことをやりました。
うまく走れないから、
ちゃんとした靴を作らないといけないと思って、
靴屋さんでオーダーしたり、
プレイセラピー(遊戯療法)に連れて行ってみたり。
プレイセラピーは
私はあんまり向いてなかったかな?
「お母さんどうですか~?」って
話聞いてくれるんだけど、
どうですか?って言われてもね(笑)
子どもたちは珍しいオモチャで遊べるから
楽しそうでしたけど。
あとはカイロプラクティックとかも行ったし、
毛髪検査もしましたね。
毛髪検査をしたのは、
自閉症ってすごくゆっくり成長していくんだけど、
その成長が止まった時期があって。
それで毛髪検査をしてみたら、
よっちゃんは
水銀とヒ素の値がすごく多く出たんです。
そのせいで成長が停滞してたんだと思います。
それからは予防接種には
行かないようにしています。
水銀が入ってますからね。
水銀とかヒ素とか、
普通はちゃんと処理して体外に出せるんだけど、
よっちゃんの体は
その処理能力が低かったんですよね。
それも自閉症の症状のひとつです。
こだわりの強さとトリセツ
こだわりは強かったですね。
みんなとおそろいの服とか、無理だったな~。
小学校の運動会は白の半そでって
決まってたんだけど、
よっちゃんはトーマスがいいって言って。
しかも半そでは着ないから
一人トーマスの長そでTシャツ。
熱中症になるんじゃないか?と心配したけど、
本人が着ないんだからしょうがないよね。
こだわりが強い子は、
学校のほうにもあらかじめ説明しておくと
いいと思いますよ。
「これはできません」
「これはこうやったらできます」と。
よっちゃんの場合は名前が覚えられないので、
「信頼関係を築くために、
まず名乗ってください」とかね。
よく旦那さんと話すんだけど、
我が子だから可愛いけど、
そうじゃない他人の子が
こんなに大変な子だったら
しんどいと思うもんね~。
トリセツを作って渡しておくと、
先生も子どもも安心だしね。
普通学級と療育学級
小学校に入ると、
保育園幼稚園とガラッと変わるから
ストレスは大きいですよね。
うちもお姉ちゃんが学校行きたくないって
言い出しました。
毎朝泣きながら連れて行って、
校長先生に引き渡してたね(笑)
よっちゃんはできるだけ
普通学級と同じことを、と思って、
1~2年生の間は普通学級で
宿題を出してもらっていました。
算数の計算はできなくても
国語の書き写しならできると思ったのでね。
でも療育の先生に
「ただ書いてるだけで、これじゃ覚えないよ」
って言われて。
やっぱりそうか、と、
支援学級のほうから宿題を出してもらうよう
お願いして、国語と算数は
支援学級に行かせるようになりました。
中学校はほとんど支援学級に行ってたかなぁ。
でも学校はちゃんと行ってましたよ。
学校は「行かなきゃいけないもの」
休みの日は「自由な時間」っていうのは
認識していて。
刷り込まれてる認識は、
きっちりきっちり守りますからね。
粘土と出会った学童
よっちゃんは小学校に上がるとき、
知り合いの学童に入れてもらったんです。
そしたら担当の人が美術の先生で、
粘土に出会ったのがその時です。
ある日お迎えに行ったら
その先生が「よっちゃん、すごいんです」
って話してくれました。
ふつうは作って終わりなんだけど、
よっちゃんはずーっと作ってるんです。
春休みなんか
「今日は6時間、よっちゃんと粘土しました」
って(笑)
付き合ってくれるのもすごいよね。
おかげでこの学童をきっかけに、
最初は折り紙、それから粘土、
と集中して好きなことに
取り組めるようになりました。
いまも『粘土職人よっちゃん』として
韮澤靖(にらさわやすし)さんみたいな
クリエイターになるんだー!って
野望もってやっていますよ。
感情コントロールできなくてパニック
自閉症の子は、
感情がコントロールできなくて
パニックになります。
大きくなってくると
だんだん抑えられるようになってくるけどね。
話しても聞いてもらえないから、
気に入っているものを持ってきて
気をそらして休ませるのが一番かな。
あとはとことん付き合うか(笑)
忘れられないのが、
よっちゃんの療育のクラスで
キャンプに行くことになったとき。
お姉ちゃんも一緒に行けるっていうもんだから
張り切ってバス乗り場まで
送っていったら
よっちゃんは「バスには乗らない!」と言い張って。
もう絶対きかないから、
仕方なく後から車で追いかけて行ったんです。
ようやく到着したと思ったら、
こんどはログハウスを見て、
ちょっと暗かったんですよね。
そしたら「こんなところでは寝られない!」と、
パパの腕に噛みついたらしい(笑)
もうパニック。
でも、水遊びができるよ~って
気をそらせたら、機嫌よく遊び出したので、
みんなでピザを焼いて食べて、
さぁ寝ようとなったら
「もう帰る!」と。
でも一緒に来たお姉ちゃんは
「帰りたくない!!」
・・・結局、
なぜか関係のない姉と私がキャンプ場に泊まって、
療育で来たはずの
よっちゃんとパパは家に帰りました。
あれは散々だったね!
何でもできちゃう姉のほうが大変?
よっちゃんは発達障害だけど、
お姉ちゃんのほうが自閉症じゃないかな?
って思ってました。
ちっちゃいときは
ずーっと私にしがみついて離れなかった。
いつも近所の同級生
10人くらいと遊んでたんだけど、
絶対なじまないんだよね。
面白そうなオモチャがあっても、
みんながひとしきり遊び終わって
どこかに行ってから一人で遊び出す。
お友だちが帰るよ~って言っても、
見向きもしないし。
3歳半くらいまでは自閉症を疑ってたなぁ。
お姉ちゃんの場合、
いまでは勉強もスポーツも
何でもそつなくこなすようになりました。
何やってもそこそこできちゃうから、
逆に何が本当にやりたいことなのか
分からないんですよね。
よっちゃんみたいに
「これしかできない!」っていうものがあれば
打ち込めるんだけど。
大人まで続けられるものを
ひとつでも見つけなさいって言って、
なぜか小6からお琴をはじめましたね。
お琴もイメトレだけで弾けちゃうんですよね。
だからあんまり練習しないし。
いま高校3年生。進路に悩んでいます。
野望をしっかり持ってるよっちゃんより、
お姉ちゃんのほうが将来心配です!
理不尽な想いを経験する
よっちゃんが「学校行きたくない」って
言うときが時々ありました。
話を聞くと、
体育でサッカーやってるときに
「役に立たない」って言われたり、
音楽の時間に隣の子に
「臭い」って言われたり。
その都度、先生とお話しました。
「こんなことをお友だちに言われて、
嫌な気持ちになったみたいです」と。
先生には、
「お友だちは悪くない、むしろ感謝している」
ということも伝えていました。
正直に言ってくれるのは大事なことです。
実際、「臭い」って言われたのは
息子がお風呂ギライだったので
「よっちゃん、お風呂に入らないと
そりゃぁお友だちだって嫌がるよ」
と伝えてお風呂に入る
きっかけになりましたしね。
社会人になったら
理不尽なことはいくらでもありますから、
子どものうちに
理不尽な経験をしておくのは必要ですよ。
発達障害とIQの診断
最初の診断のときはIQ71と言われて、
「うそだろ~?」と思ったけど、
2回目にテストしたときはIQ65でした。
お年寄りの介護認定みたいなもので、
その時によって変わるんですよね。
子どもの調子も。
急によくなったりして(笑)
正確な診断は難しい。
※IQと障害認定について
資料引用元:厚生労働省WEBよりIQ51~70は軽度知的障害
IQ36~50は中度知的障害
IQ21~35は重度知的障害
IQ ~20は最重度知的障害
発達障害の診断は定期的にあるんですが、
つい先日診断したときは
59だったIQが63に上がってね。
つい、がっかりしちゃって(笑)
先生から
「上がることは稀なんだから、
もっと喜んでください!」
って言われましたよ。
IQ50を切ると、
中度知的障害に認められて、
障害年金を受けられる可能性が
高くなるんです。
軽度じゃ基礎年金は
受けられないんだもの~。
軽度だからと言って、
ふつうに会社に勤めて
人間関係を築くのは難しいし。
現実を考えると、やっぱり障害基礎年金が欲しい。
子どもの成長を素直に喜べない、
複雑な気持ちでしたね。
※障害年金の受給には、適切な診断・判定が必要です。
発達障害の子育てについて
よっちゃんの場合
しゃべり始めたのは
年中さんくらいかな?でも、
いまはふつうに会話するようになってます。
ゆっくりだけど、
ちゃんと成長するから!
洗濯物も干しといてって言ったら
干してくれるし。
詰めて干しすぎて
乾いてない時もあるけど(笑)
だいぶ上手になったよ~。
洗濯物たたむのは苦手だから
やってくれないけどね。
料理もできるようになったし。
よっちゃんはもう一人で生きていける。
うちの場合、
私は何にもやらない人だから
自分でやらないと
どうにもならないって
知ってるんですよね。
だから自立できるように
色々やらせてきました。
逆にパパは何でもやっちゃう。
「やってあげられる時に
やってあげたいんだ」って。
私はやらないけどね(笑)
大変だけど、
どれだけ関わってあげられるか、が
大事かな。
五感でどれだけの体験をして、
色んなことを知ることができるか?
興味をもって知識が増えれば、
おのずと言葉も出てくるんです。
よっちゃんも、怪獣のことだけは
スラスラ話してました。
自分にとって必要じゃないものや
人の名前は覚えません。
人間の本質を知りますよね。
人の名前覚えられなくても
大丈夫なんだ~って。
自分にとって大事なことだけ
覚えておけばいいんだから。
私、もともとすごく短気だったんだけど、
子どもにとことん付き合ってたら、
すごく穏やかになりましたよ。
子どもたちのおかげかな。
母親の自立が必要!
私は、息子に障害があると知ってから
いまの株式会社を立ち上げました。
この子に私が残せるものは、
人脈しかないと思ったから。
私がいなくなって、
この子を支えてくれるのは
その時にいてくれる
周りの人ですからね。
最近聞いた話ですが
子育てを卒業した世代の夫婦が
別居をし始めたんですって。
離婚じゃなくてね。
奥さんのほうが
「自立して一人で暮らしてみたい」って。
ご主人のほうもお料理とか
やったことなかったことを
一人でしなければならなくなって。
お互いが自立して暮らせるように
なったみたいです。
すごく良いことだなぁって思いましたよ。
親ももちろん、いずれ子どもは
一人で生きていかないといけない時が
来るんです。
母親が社会とつながることって、
とっても大切だと思いますよ。
お母さんも自立してないとね。
松橋裕子さん 素敵な子育てエピソードを
ありがとうございました!
株式会社 MV サービス代表としてレンタルオフィスのオーナーをしながら、イベントプロデューサー、女性起業家コンサルタント、婚活教育コンサルタント、テニスコーチ・・・数々の顔を持つ松橋裕子さん。自身2作目のプロデュース作品となる映画製作にも取り組んでおられます。自閉症スペクトラム障害をもつ息子さん「粘土職人よっちゃん」のマネージャーとしても活動されています。
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